天照大御神が、弟の素戔嗚命の横暴に悲しんで天の岩戸にお隠れになってしまったという神話劇です。
優しく解説
澄み渡った高い空の上に、高天原という神々のお住まいになっているところがありました。そこには天照大御神あまてらすおおみかみさまという偉い神さまがいらっしゃいました。
その弟に素戔嗚命という力自慢で、いたずら好きな神さまがいました。ある時、素戔嗚命は大御神さまを驚かそうと、そっと御殿に忍びより、天井からドサッと馬を投げ入れました。
日頃やさしい大御神さまも、さすがにお怒りになられ、天の岩戸という岩屋に隠れてしまわれました。さぁ大変です。世の中はもう真っ暗闇です。困りはてた神さまたちは、天安の河原に集まり相談をしました。
そこで思兼命という賢い神さまが一計を案じるのでした。
まずニワトリを一羽鳴かせました。そして天鈿女命という踊りのうまい神さまは、トントンと拍子をとりながら踊りだしました。 神さまたちは手をたたいたり、笑ったり、しまいには歌をうたい始めました。
外が余りにもにぎやかなので、大御神さまは不思議に思われ、岩戸を少し開いてみました。その時です。力の強い手力男命は、力いっぱい岩戸を開きました。 真っ暗だった世の中も明るくなり、神さまたちも大喜びです。高天原にもまた平和がもどってきました。
備中神楽のストーリー
登場の神々
1.天児屋根命(あまのこやねのみこと)
2.天太玉命(あまのふとだまのみこと)
3.天思兼命(あめおもいがねのみこと)
4.天鈿女の命(あまのうずめのみこと)
5.天手力男命(あめたちからおのみこと)
6.天照大御神(あまてらすおおみかみ)
まず天児屋根命、天太玉命の両神が舞い出し、 知恵の神である思兼命を呼んで岩戸を開く相談をする。
天思兼命の案は、岩戸の前に榊を植え並べ、上の枝に勾玉、中の枝に八咫鏡、下の枝に御幣を立て神殿をつくる。
岩戸正面に長鳴きの鳥を鳴かせ、天鈿女が神楽を舞う。そうすれば大御神は、岩戸を少し開け、下界をみるにちがいない。その時、強力な手力男の命が岩戸を左右に押し開き、元の明るい世の中に戻すという案でした。
さっそく、天鈿女命を呼び出し急テンポな舞をする。両神は岩戸に向かって祝詞を奏上する。
次に天思兼命が、天手力男命を呼び出し、岩戸を開くため力を貸してほしいと依頼する。天手力男命は道化役なり太鼓(音楽さん)滑稽な掛け合いをする。これも一つの見所です。
神楽幕を岩戸と見立て天手力男命が幕を開けると鎮座する天照御大神が現れる。一同はひれ伏し秘文を唱えます。「まずは岩戸のそのはじめ、隠れし神を出ださんとて、八百万の神遊び、これぞ神楽のはじめなり。御神楽の秘文に曰く。あれ、あな面白し、あな楽し、あな清やけ、おけおけと申す。一二三四五六七八九十たり百千萬よし」と唱え、天照御大神の象徴である鏡を天手力男命が取り出し全員で舞納める。
“天津神 天の岩戸を押し開き 御世明らかになるぞめでたや”と一首詠じ、元の世界に帰ったという神話劇です